「旅はるかアンデスの日々」は全20話で、7ページです。

この旅行記は99年1月から99年2月にかけて、「****新聞」に
連載されたものです。連載を始めるにあたって「顔・ひろば」という作者紹介
の記事が載りましたので、そちらからお届けします。

”旅は人を豊かにする”


本誌の新年号から連載がスタートした「旅はるかアンデスの日々」。自身の実体験を
もとに、過去と現在とを交錯させながら、具体的なエピソードを交えて執筆。
’77年の夏に訪れたアンデス旅行記が題材になるが、そもそも旅のきっかけは「30才
の誕生日を海外で向かえたかった」。初めての海外旅行に胸を弾ませ「南米には異質
な何かがあるんじゃないか」と好奇心を募らせた。
旅はまず、ヨーロッパを周遊し、そのあと目的地へ向かう予定だったが、途中スペイン
のマドリードでいまの夫と運命的な出会い。そのまま意気投合して北アフリカを貧乏旅行。
寄り道したのも束の間、その後再び一人旅に。 アメリカに渡ると、「ミシシッピー川の岸辺
にたたずみ、ニューオリンズの香りにふれた」。 メキシコからペルーにかけては大学時代
の友人と同行。アンデスの裾野に到着したときには、出発からすでに一年が経過。ロング
ランの旅となった。
やがて、その友人が肝炎を患うと、看護のために滞在を余儀なくされた。だが、それが
幸いしてか、現地で染織関係の仕事に携わる日本人と出会い、染織に深く傾倒。
ケーナ(竹笛)の音色に導かれ、アンデスに旅立ったと回想するが、「書くことを通して
自己確認できた部分も」。情景描写よりも「旅の実感」に重点を置いた。 「今でこそ、
海外旅行も一般化してきているけど、当時はバックパックを背負いながらの長旅が
目立った」。 最近の旅のスタイルはファッション的になったと分析。現地で、同じ人種と
間違えられた思い出に笑いをかみしめる。


憧れのアンデス風景(ボリビアのポトロ村)

(この旅行記の写真は全て、 木下 瞳 が撮影しました。)

第一話

「1977年から80年ににかけて、ヨーロッパ・北米を経由して、中・南米への旅
をしました。一年間の予定がこんなに長くなってしまったのも、中南米、特にアンデス
地方の山里の暮らしに、すっかり魅せられてしまったからです。上富良野で農業を
始めて10年目の今年、おりにふれ眺めていたスライドを絵葉書にしてみました。私
にとっては、どれも懐かしく、その時々の風やにおいや、人々の声が、そのまま、
よみがえってきます。・・・・・・」と、これは三年前に作った私の絵葉書の挨拶文です。
そう、丁度20年前、東京でのOL生活にチョット「。」を打って旅に出た。目的?
何もない旅をするのが、目的。目的地?とりあえず地球の裏側アンデス地方。
ヘッそれだけ?ウンそれだけ。アッ一応期限は一年間。出掛ける前に用意したのは、
羽田(まだ成田空港はなかった)発パリ往復一年間オープンの格安チケット。かの
南まわりパキスタンエア。北京、ラワルピンジ、カラチ、ドバイ、フランクフルトと経由し
て、日本を出て何日目か分からなくなりかけた頃に、パリに着いた。これが私の海外
旅行の第一歩、だった。
幼い頃から何となく憧れていた外国への旅。それまでチャンスがなかったわけでは
ないのだが、出掛ける前から、帰ってくる日までの全てが読めてしまうような旅には
出たくなかった。・・・・ナァンテ、これが大きな間違い(?)の第一歩・・・だった。


蒼い空に霊峰イリマニ山が望めるラ・パスの街

第二話

アンデスの日々・・・なんて言って、実際アンデス山脈の端っこに到着したのは、日本
を出て、とうに一年は過ぎていた。唯一握り締め続けてた,復路のエアチケットは
アンデスの裾野で捨てた。晴れて( !! )「ヨソイ、ハポネサ(私は日本人です。)」を証明
するパスポート以外、私を束縛するものの無い旅人になっていた。
そもそも、目的地がアンデス地方に決まったのは、当時TVコマーシャルのバックで流れ
ていたケーナの音色を聞いたときだったように記憶する。 いつかシルクロードを歩くか
なあ・・・の旅が、この瞬間「アンデスをめざせ」に変わっていた。
時は96年10月末、ボリビアの首都ラパス。私は、友人宅のベットの中で「ナンデコウナ
ルノ・・・」状態でうなっていた。枕元には、見たことも無いようなデカイボンベとマスク。
これがあのガイドブックに必ず書いてある、”高山病”と覚るまで半日位かかっていた。
マイアミからラ・パスには直行便で来た。窓の下に広がる雪山、光るチチカカ湖。その
辺までは、「降りたら、ゆっくり歩く。はしゃがない。アルコールは控えめに。等々」の注意
事項は頭のの中にあった。なのにである。20年ぶりに会う友人、車窓のイリマニ山、
ああなつかしやラ・パスの匂い・・・」と、すり鉢状の市街地めざして、ジェットコースターの
如くアンデスの風を浴びている内に、すべてが吹っ飛び・・・。気が付いたらベットで、
うつろな私になっていた。 アア何テコッタ!!。